子猫を保護した時 〜 ふーちー編 〜

出会い

ふーちーとの出会いは、母からの電話がきっかけでした。

隣の畑のおじさんの柿の木のところに、子猫が捨てられとってな。
飼いたいけど、うちももう、5匹おるから、父さんに反対されてさ。
もう、かわいそうで、かわいそうで。

母親のあんな辛そうな声は、そう記憶にないです。

これは後から分かったことですが、二二箇所分けて二匹づつ遺棄されていたらしく、合計で四匹。
その中で、唯一生き残ったのが、ふーちーでした。

段ボールに毛布は引いてありましたが、子猫が生きていけるような餌などはなかったと聞きました。
その時、余りの胸糞悪さに電話口の声が震えました。

とにかく、土曜日に様子を見に行くからと約束して電話を切りました。
母には、土曜日までの二日間、面倒を見てやって欲しいと頼みました。
その時点で、私の中では、ふーちーを引き取ろうと決意していました。

きっと母にとっても、その言葉は、“私が引き取ると同義だったと思います。

助けてあげたいけど、飼えない葛藤から、ここ数日の母からの連絡は、暗いものが多く、どんよりと沈み込んだ雰囲気を漂わせていました。
そんな母の声が、私の言葉を聞いた途端、弾んだのが分かりました。
翌日、母からはバンダナで首輪を作ってあげた、と写真が送られてきて、これはもう決定事項だな、と腹をくくりました。

ふーちーは、とても賢い子で、家の猫全員に自ら挨拶をしに行き、母から餌を貰う承諾を得ようとしているようでした。
そんなこともあってか、皆、ぐいぐい来る、ふーちーに少し引きつつも、手を出すようなことはなかったです。

約束の日

そして、約束していた土曜日。
主人の仕事の都合もあり、実家に着いたのは夕方でした。
母は、いきなりは、ふーちーの話をせず、疲れただろうから、と私たちに料理を振舞ってくれました。
ご飯を食べながら、両親は、ふーちーのことを教えてくれました。

実家の隣の畑の木の根の所に、メスの子猫と共に、二匹が段ボールに入れられて捨てられていて、もう一匹は、外敵に攻撃され、命を落としたこと。
その子が亡くなるまで、ふーちーは懸命にその子を守ろうとしていたと聞きました。
その話を聞いて、私の決意は固まりました。

お腹も膨れ寝ている主人を放って、私は、ふーちーを探しに外に出ました。
ですが、探しても探しても、ふーちーの姿は見当たらず、諦めかけた時、隣の家のおばさんが生ごみを畑へ放ろうとしている後ろをついて歩く白い物体が目に入りました。
私の姿を見るなり、おばさんは嬉しそうに話しかけてきました。
他愛無い昔話に相槌を打ちつつ、私はふーちーから目を離すことができませんでした。
私の視線が、ふーちーに向いていることに気付いたおばさんは、何かを察したようで、興奮からか、少し前のめりで私に尋ねました。

この子、引き取ってくれるん?

その言葉に即答できなかった私は、寝ている主人を叩き起こすと、主人を連れてふーちーの元へ駆け戻りました。
やはり、ふーちは賢い子です。
決定権のある、主人の足元に擦り寄ると、「にゃあ」と鳴いて見せたのです。
主人は突然現れた毛玉に、すっかり酔いも覚めたようで、やせ細った、ふーちーの頭を撫でると、「そうやなぁ、しらたまかな」と一言。
それは、我が家の子にするという宣言でした。
ただ、その日は夜も遅いということで、一旦自宅に戻り、ふーちーを迎え入れる準備を始めました。

「飼いたくても飼えない」その言葉は、一見冷たいように聞こえますが、その子の未来を考えた上での発言であれば、とても責任感がある、と思います。
両親も、還暦間近。何かあった場合のことを考えると、その命に責任を持ってあげられるほどの自信がない、と。
私は、たま先生の時に学んだ通り、“ふーちーの命に責任を持つ”、と決めて両親に引き取ることを伝えました。

迎え入れの準備


翌日、明るい昼間に見た、ふーちーは、思った以上に酷い状態でした。
猫風邪で、目はほんの僅かしか開くことが出来ず、鼻水と目やにが乾いて、顔全体が黄色く黄ばんでいました。
そして、何よりとても痩せていました。
ふーちーをキャリーに入れ、車に乗り込もうとすると、隣のおばさんが、目に涙をためながら、ふーちーの世話代として、一万円を差し出してきました。
拒否しようとする私の手を強く握り込み、「本当に、ありがとう」と無理矢理お金を握らせてきました。
その善意の気持ちは、ふーちーの病院代として、ありがたく使わせて頂きました。

ふーちーを家に連れて帰り、まずは、目やにと鼻水を取ってあげました。
すっかり乾き切っていて、何度も何度も顔を拭いてあげないと取れませんでした。
目やにが取れた、ふーちーの目は、とっても綺麗なセージグリーンの目をしていました。
顔の汚れが綺麗になるのと比例して、猫風邪特有の膿んだような臭いも緩和されたように思います。

それでも、くしゃみと目やには相変わらずで、翌週の月曜日に動物病院を受診しました。
その時の健康診断では、特に問題はなく、検便も問題なく陰性でした。
後に、ふーちーは【肥大型心筋症】と診断されるのですが、その時のお話は、また別の機会に。

ちなみにその時の写真がこちらです。
風邪が治った途端、バクイケ化してます。
ポテンシャルお化け……!

目やにと鼻水が落ち着くのと同時に、くしゃみもなくなり、しれっとお澄まし顔で家猫生活スタートです。
家に連れてきても、ふーちーは物おじしない子で、たま先生に、しっかり挨拶を済ませ、早々に舎弟ポジションに。
たま先生は、気難しい性格なので、ふーちーの積極さに若干引きつつも、渋々受け入れてくれています。


本日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
よければ、また、ふーちーに会いに来てくださいね。
心より、お待ちしております。